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2007年1月20日 (土)

『憲法九条を世界遺産に』

 太田光・中沢新一『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書)の惡口を書かうと思つて拾ひ讀みしてみたら、太田が良い事を云つてゐた。


 太田 『国家の品格』(藤原正彦・新潮新書)を読むと、今の日本人は昔の日本人が持っていた美しい武士道精神を失いつつあると書いてあります。でも、そういうことは昔から言われていることなんですよね。僕は司馬遼太郎が好きでよく読んだんですが、『竜馬がゆく』は、江戸末期のころの幕府の侍たちは、長い鎖国の中でみんな平和ボケしていて、昔の武士道精神を失ってしまっていたというニュアンスで書かれています。そこから、坂本竜馬や高杉晋作のような、骨のある武士道を持った人間が下から出てきて明治維新を起こした。/坂本竜馬や高杉晋作は、武士道を完遂した人たちだと思うんですが、じゃあ江戸時代の日本人が武士道を崇高なものだと思っていたかというと、それは違う気がします。あの時代のほとんどの日本人は、武士道というものをちょっと茶化して考えていた印象が、僕にはあるんです。[中略]昔から日本には武士道もあったけれど、落語の文化も一緒に持っていて、うまくバランスを取ってきたんじゃないかと。日本人がこれは正義だと信じる美しい武士道精神がある一方で、「いや、ちょっと待てよ」とそれを茶化す文化も同時にあったわけです。武士道の危うさを茶化して薄める芸というか、僕がやらなければならないのは、そこかなと思っているんです。

 また、『国家の品格』についてかうも發言してゐる。

 太田 ホリエモンみたいな人間はかつていなかったと決めつけているのも、ひっかかります。そんなことはないですよ。古典落語に『千両みかん』というネタがあります。[中略]こんな落語が古典として残っているということは、江戸時代にもホリエモンはいたということです。

 太田の主張の全てに同意出來るとは思はないが、少なくとも上の引用部分については、太田は借物でない自分の頭で物を考へ、『国家の品格』の杜撰を見事に批判してゐる。讀了後に改めて感想を書く事にしよう。

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