« ダメな議論 | トップページ | 脅迫メール(1) »

2007年1月13日 (土)

呉智英知事の失敗

 愛知縣民以外は誰も知らないと思ふが、来月、愛知縣知事選がある。地元の新聞各紙は關聨記事を連日掲載してゐるが、十二日付朝日新聞(中部版)社會面「私のマニフェスト」に同縣出身の呉智英氏が登場した。見出しは「能力と努力で評價される公平な學歴社會にしたい」。記者の聴き書きなのかも知れないが、持論を明快に述べたもので、いつもながらすつきり讀めて氣持ちが良い。主張の内容そのものも、感情的な學歴反對論に比べれば數等優れてゐる。しかし少しく引掛かる部分があつた。

 私が知事になつたら、6年制の公立中高一貫校をつくる。獎學金制度も充實させ、貧乏でも努力次第で高學歴が手に入るやうにする。中長期的には實業高校のレベルも上げたい。愛知の工業高校を出ると一流企業に無條件で就職可能、商業高校の成績が優秀だと大學に編入學できるといふやうにする。(かな・漢字表記は變更)

 私は教育と政治を分離すべきだと考へてゐるので、そもそも公立校制度には反對であるが、それはひとまづ措く。問題は「愛知の工業高校を出ると一流企業に無條件で就職可能」と云ふ部分である。ある學生を採用するかしないか決める權利は企業側にある。「愛知の工業高校」を出た學生の中には、勿論優秀な者もゐるだらうが、かといつてそれが本當に企業の求める人材かどうかは分らない。情報技術科の學生は欲しいが土木科は要らないと云ふ企業もあるだらうし、一流企業とは云へ不景氣で新卒採用そのものが困難な場合もあるだらう。

 さうした企業側の事情にお構ひなく、「無條件で就職可能」と云ふ知事の方針を貫けばどうなるか。企業は要りもしない人材を抱へ込み、經營が次第次第に左前になつて行くのは間違ひない。新入社員の首をすぐに切れれば良いのだが、それは知事が許さない筈だ。さうした強制採用を毎年毎年續けてゐるうちに、やがて一流企業は一流企業でなくなり、下手をすると潰れるかも知れない。それは輝かしい「學歴」を手に喜び勇んで入社していつただらう工業高校卒業生達にとつて決して幸福な結末とは云へまい。權力で企業の自由(それは即ち個人の自由なのだが)を縛るやうな惡政は斷じて行ふべきでない。

 (附記)「私のマニフェスト」は識者に自らの政治的意見を聽く連載記事。呉智英氏が本當に知事選に出馬する譯ではないので、誤解無きやう。

|

« ダメな議論 | トップページ | 脅迫メール(1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30565/13463084

この記事へのトラックバック一覧です: 呉智英知事の失敗:

« ダメな議論 | トップページ | 脅迫メール(1) »