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2005年7月 5日 (火)

アフリカの貧困

 6日から英國グレンイーグルズで始まる主要國首腦會議(G8サミット)に合はせ、世界各地で同じ日にロックコンサートを開き、アフリカ支援への關心を高めようとする試み「ライブ8」が2日始まつた。東京を皮切りにロンドン、ローマなどで開催。全世界で計200萬人以上の結集を見込んでゐる。 /20年前にエチオピア饑餓への關心を呼びかけた同樣の企劃「ライブ・エイド」の生みの親でロック歌手のボブ・ゲルドフさんが仕掛けた。ロンドンのハイドパーク會場では、ロックバンド「ピンク・フロイド」が四半世紀ぶりに復活することもあつて、20萬5千人分の無料チケットがすぐにはけた。U2やポール・マッカートニーさんも出演した。 http://www.asahi.com/international/update/0703/001.html
 アフリカ支援、結構な事である。「ライブ8」の效果が早くも現れたのか、七月三日付朝日新聞朝刊國際面記事「英、農業補助削減狙ふ」によれば、サミット議長國のイギリスでは、欧州連合(EU)の農業補助金制度の見直しを提唱してゐると云ふ。
 英國によるかうした外交姿勢は、EUの農業補助金への批判につながつてゐる。「EUが域内の農家を保護してゐるために、競爭力の弱いアフリカの小規模農家が壓迫されてゐる」との論理だ。/英國の對アフリカ支援の推進役であるブラウン財務相は6月29日、ロンドンでのユネスコ主催の會合で演説。農業補助金を批判して「先進國の僞善をこれ以上、無視するわけにはいかない」とさへ言つた。/農業補助金は獨佛主導でつくられ、主にフランスなど農業大國が恩惠を受けてゐる。
 イギリスの政治的思惑は兔も角、理屈のうへではブラウン財務相の云ふ通りであつて、ヨーロッパが巨額の税金で自國の農民を保護してゐる爲に、アフリカの農民は販賣競争で苦戰を強いられ、困窮から脱する事が出來ずにゐる。以前引用した事のあるジョージ・オーウェルの文章を再び引く。
 たまに彼ら[左翼の諸政黨]は、イギリスの勞働者がアジアやアフリカの收奪からある程度利益を受けたことは認めたが、しかしつねに、われわれは收奪をやめてもなんとか繁榮を維持できるといふふうに思はせた。事實、多くの勞働者は自分たちが搾取されてゐると聞かされて社會主義に走つたのだが、しかし世界的立場から見れば、彼らこそ搾取者だつたのである。(ジョージ・オーウェル「作家とリヴァイアサン」、小野協一譯)http://kimura39.txt-nifty.com/hell/2005/04/post.html
 アフリカの貧困を救ひたければ、各國政府は農業補助金をはじめとする保護制度を廃止すべきだし、國民もその決斷を支持すべきである、假令農民の收入が減らうとも。かう云ふ結論にボブ・ゲルドフやU2が贊成して呉れるかどうかは分からないが、「自由な交易は経済厚生を向上させる」と云ふ經濟學の原理に照らせば少なくも選擇肢の一つに入れざるを得ないし、常識的にも自分の懷を痛めずに他人を救へるなどと云ふ蟲の良い話はあり得ない。

 「ライブ8」は日本でもやつたらしいが、貧困について深く考へて貰ふ爲、觀客に經濟學の教科書を配つたと云ふ話は聞かない。朝日新聞もイギリスが貧困救濟を口實に農家切捨てを狙つてゐると非難がましく報ずるばかりで、ではどうすれば良いのかと云ふ疑問には答へてゐない。他人を救つてやらうと云ふ人間がその方策について知的に貧困であり、その貧困を克服しようと努力しない事、これは經濟的貧困より遙かに深刻な道徳的罪惡である。

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 〈英国式無銭外交〉でイギリスの対アフリカ武器輸出は五億ドルと述べられているが、その後急増を続け十億ポンド(二千億円)に達したことがガーディアン紙に報じられた。平成十一年から十六年の五年間で四倍になった。 ライブ8を利用して日本に圧力を掛け債権を放棄させ...... [続きを読む]

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