二つの行動原理
中西輝政の文章(孫引き)再掲。
繰り返し言ふが、國の存立のために命を捧げるといふ、これ以上はない崇高な自己犠牲の精神を發揮した人々は、國家が全力をもつて顯彰し、後世に傳へていかなければならない。さうでなければ、國家としての道義心は廢れ、將來の危機において立ち上がれる日本人も期待できないはずである。
日本が例へば共産主義國になつても、上記の文章は同じやうに通用する事に注意されたい。今は「右傾化」しつつある世の中だから保守派知識人は上のやうな隙のある文章を綴つても平氣でゐられるが、日本が共産主義國になつても知識人は同じやうに「國の存立のために命を捧げるといふ、これ以上はない崇高な自己犠牲の精神」云々と語れるか。アンティゴネーのやうに國に背かざるを得ない場面が無いと云へるか。人間が人間らしく生きる爲には、政治だけではなく、道徳と云ふもう一つの行動原理が必要なのである。
我々の社會の理想より一段と高い基準がなにもないとすれば、我々はその理想から批判的距離をとることが全くできなくなる。(レオ・シュトラウス『自然權と歴史』、塚崎智・石塚嘉彦譯)
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