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2004年4月29日 (木)

大西巨人氏公式サイト

 舊臘から「足掛け二世紀越し」で讀んでゐるのは、大西巨人『三位一體の神話』(光文社)。現在、上卷を終へ、下卷に入つたところである。既にこの欄で書いたが、大西氏は政治信條的には左翼であり、それゆゑ私は一時、(愚かにも)氏の著作を敬遠してゐたのだが、最近、また熱心に讀んでゐる。大西氏の文學に關する該博な知識・道徳に對する眞摯な考究は、そんぢやうそこらの保守派知識人が束になつても敵ふものではない。

 代表作『神聖喜劇』をはじめ、殘念ながら絶版品切の著作が多いのだが、思想・哲學に關心のある人は『迷宮』が、詩歌が好きな人は『春秋の花』が、ともに光文社文庫からまだ出てゐる筈だから、一讀を勸める。批評は、みすず書房の「大西巨人文選」全四卷で讀める。大西氏の文章は(略字新かなではあるものの)第一級品であつて、私は、松原正氏の文章と同じくらゐ好きである。大西・松原兩氏の文章には相通ずる側面があるやうにも思はれる。
 また、松原氏の著作(どの本だつたかは失念。『暖簾に腕押し』か)には、渡部昇一氏と大西氏との間の名高い「神聖な義務」論爭に關する文章も收められてをり、その一文は、大西氏と松原氏との思想の違ひを鮮やかに映し出してゐたと記憶する。これらについてはいづれ論じたい。ちなみに、呉智英氏も、石川淳を論じた文中で、「倫理主義者」たる大西氏に言及してゐる。
 こんな事を考へながら、ふと「インフォシーク」で檢索してみたら、何と、大西巨人氏の公式ウェブサイトが、存在した。
 これは迂闊だつた。これからじつくり讀まう。(平成13年1月2日)

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