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2004年4月29日 (木)

男は默つてベートーヴェン

 EMI、デッカ、フィリップス、ドイチェ・グラモフォンなどの大手レーベルが共同で「二十世紀の偉大なピアニスト」と云ふ全百卷くらゐの厖大なシリーズを出しつつあつて、このうち、本日はスティーブン・コヴァセヴィチの「Ⅰ」「Ⅱ」(各CD2枚組で都合4枚)その他を買つてきました。コヴァセヴィチはアメリカ人で、今年六十一歳。

 日本では知名度は今一つですが、ベートーヴェンを彈かせたら當代一二を爭ふピアニストです。このCDには「熱情」「テンペスト」などの若き日の録音が收められてゐます。今ちよつと聽いたら豫想に違はず素晴らしい。男は、讀むなら軍記物、聽くならベートーヴェンですよ、やつぱり。ベートーヴェンは田舍者で野暮な所爲か、洒脱なモーツァルトに比べて最近はどうも差別されてゐるやうな氣がします。とは云へ、モーツァルトが決して洒脱なだけの男で無い事は、以前このサイトでも書きましたけれどね。
 現代のベートーヴェン彈きの一二を爭ふ他のピアニストは、同じくアメリカのリチャード・グードと、イギリスのジョン・リルであります。グードはElektra Nonesuch、リルはASVと云ふレーベルからすでにピアノソナタ全集を發賣濟。コヴァセヴィチの全集もEMIで進行中です。ドイツ音樂で米英の奏者が優れてゐるのが興味深いやら情けないやら。現在、ドイツ人の有名ピアニストと云はれたら名前がほとんど浮びません。
 コヴァセヴィチは割合ハンサムですが、グードとリルは揃ひも揃つて武骨そのもののオッサン(しかもリルは見事な光頭)で、いかにもベートーヴェン彈きにふさはしい面魂なのが嬉しい。この傳統的風貌(?)の頂點に君臨するのは往年のドイツの名ピアニスト、ウィルヘルム・バックハウスでして、興味のある方は店頭でCDのジャケット寫眞を見てください。彼は「鍵盤の獅子王」と呼ばれたのですが、本當にライオンみたいな顏をしてゐます。(平成13年2月22日「地獄の箴言 掲示板」投稿。同年9月16日再録。16年4月29日修正)

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