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2004年4月29日 (木)

引用時の表記變更 私の方針

私的な言論活動者たる私(木村)は、「現代かなづかい」(新假名)で書かれた文章を引用する際、以下のやうな方針で臨む。なほ、漢字の略字體から正字體への變更についても同斷。

原則として、引用の際には正假名に改める。正假名が(少なくも新假名よりは)正しい國語表記であると信ずるからである。喩へ話で云ふと、「私わ海え行きます」と云ふ文章があつた場合、馬鹿正直に「原文のママ」と斷つたうへで、そのまま引用するやうな「原文絶體主義」を私は採らない。相手の無知を嘲笑する目的でもない限り、「私は海へ行きます」と正しい表記に改める。同じく、誤れる國語表記である(と私が信ずる)新假名の文章を引用する際、私は正しい表記(正假名)に改める。「表記は變更」と註を入れるか入れないかは文章の性質や前後關係によるが、不都合のない限りなるたけ省略する。簡潔を尊ぶからである。

以下は例外である。

(1)新假名遣そのものを俎上に載せて論ずる文章の場合、當然、新假名遣のままで引用する。

(2)電子掲示板上での遣取りのやうに、比較的氣輕かつ時間の制約がある場合、安直に原文の複寫で濟ませる事が多い。

(3)相手の思考の輕薄・愚劣を際立たせるため、あへて意地惡く新假名のまま引用する場合がある。

以上である。

ついでに、「表記變更は失禮である」と云ふ主張に對して、私の行動指針を申し述べる。

(a)相手が非常識な人間である場合。何の遠慮もいらない。むしろ、相手が怒れば怒るほど、嫌がらせを兼ねてどしどし表記變更する。馬鹿が誤讀するといけないので念を押しておくが、嫌がらせだけのためにわざわざ表記變更するのではない。もともと正當な行爲である表記變更が、たまたま相手に對する嫌がらせにもなるから、一石二鳥と云ふ事に過ぎない。なほ、私はイエス・クリストと異り、「目には目を、齒には齒を」主義者であるので、失禮な奴を聖人君子よろしく教へ諭すと云ふやうな寛容な事は、よほど體調の惡い時でもない限り、やらない。

(b)相手が常識人の場合。常識人は、表記變更くらゐで「失禮だ」と怒つたりしないので、そもそも何の問題も發生しない。ゆゑにどしどし表記變更する。終はり。……これではあんまりなので、少々補足しよう。

何のフォローにもならないが、常識人と云へども、非常識な國語表記(新假名)を何の後めたさも感ぜず使用してゐるとすれば、その部分においては非常識であると私は思ふ。しかし、非常識な表記でも、永らく親しめば愛着のやうなものは沸く。それは眞の愛着ではないと私は思ふから「愛着のやうなもの」と呼ぶのであるが、「愛着もどき」であるにせよ、他人からケチを附けれられれば愉快な氣分はすまい。

私とて人の子、非常識人には何の良心の呵責もなく罵倒の限りを盡くしても、常識人の感情は出來るだけ損ねたくない。從つて、「表記は變更」と註を入れる事もあるだらう。電子掲示板の議論の場合、上記のやうに原文のままの引用で濟ませる事が多いので、自ら喧嘩の種を播く機會は元來少ない筈である。いやいや、原文複寫で濟ませられて好かつたと、私は内心ほつとするであらう。

しかし、己に許せるのはそこまでである。いくら相手が昵墾の仲でも、その人の文章を引用して「パスカルが説いたやうに、人間は考る葦なのだ」式の珍妙な文章を綴る事は、私には斷じて出來ない。表記變更すべきだと考へたら、さうする。それをきつかけに論爭になつたとしても、常識人と國語表記に關する議論を鬪はせられたなら、それに過ぐる仕合せはないではないか。また、可能性は小さいと思ふが、相手が表記變更を理由に引用そのものを拒絶・削除要求した場合、私はその人物を「非常識」とみなし、以後は「非常識人モード」で對應する。

最後に、相手から自分の文章を新假名に變更された場合の對應を附加へておかう。私は正假名を正しい國語表記と信ずるので、それを誤れる表記に變更されたら、あんまり好い氣分はしない。他人の文章表記は勝手に變更する癖に、自分が變更されると氣分を害すると云ふのも、我ながら我が儘なものだ。だが、そもそも何かを正しいと信ずるとは、我が儘な事なのだ。

しかしながら、現實には、私は表記變更されただけで激怒し文句を附けたりはしないであらう。腹を立てるとすれば、引用を通じて展開される主張の内容が原因である。正假名で下らぬ文章を綴る人間もゐるし、新假名を使ふ人の主張が全て間違ひである道理もない。筋の通つた持論を述べる人であれば、たとへ自分に對する批判であつたとしても、私は本筋と無關係な表記變更にいちやもんを附けたりしない。そもそも、さう云ふやくざのやうな云ひ掛かりを附けるのは、なぜか決つて、新假名で書く人間(の中の馬鹿な連中)の側なのである。やめて呉れよ、本當に。

(平成13年6月4日)

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