« 箴言集 ジョージ・スタイナー | トップページ | 箴言集 ソポクレス »

2004年4月29日 (木)

箴言集 夏目漱石

 御前は病人也。病人に責むるに病人の好まぬことを以つてするは苛酷のやうなりといへども手習をして生きてゐても別段馨しきことはなし。knowledge を得て死ぬ方がましならずや。――夏目漱石
(明治二十二年十二月三十一日 正岡子規宛書簡 。『漱石書簡集』 岩波文庫、19頁)

 「御前の如く朝から晩まで書き續けにてはこのIdeaを養ふ餘地なからん」「勿論書くのが樂たのしみなら無理にせよと申譯にはあらねど毎日毎晩書て書て書き續けたりとて小供の手習と同じこと」。漱石は子規の多作を率直にかうたしなめ、讀書による思想の涵養を勸める。その後に續くのが引用した件であるが、現實に死ぬかもしれない相手に向ひ、「手習をして生きてゐても別段馨しきことはなし」と迄言ひ切るとは凄い。漱石の子規に對する友情が本物だつたからこそ、又、漱石自身が「knowledge を得て死ぬ方がまし」と信じてゐたからこそ、書けた言葉である。
(平成12年10月24日)

|

« 箴言集 ジョージ・スタイナー | トップページ | 箴言集 ソポクレス »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30565/510416

この記事へのトラックバック一覧です: 箴言集 夏目漱石:

« 箴言集 ジョージ・スタイナー | トップページ | 箴言集 ソポクレス »